ニセ基地局とは何か?その仕組みと危険性
ニセ基地局とは、正規の携帯電話基地局を装った不正な通信設備のことです。
通常、スマートフォンは最も電波強度の高い基地局に自動的に接続する仕組みになっていますが、ニセ基地局はこの特性を悪用し、強力な電波を発して周囲のスマホを強制的に接続させます。
これにより、以下のような被害が発生する可能性があります:
- 正規の通信が圏外になる
- 通信内容の傍受による個人情報の窃取
- フィッシング詐欺のSMS(ショートメッセージ)の送信
村上誠一郎総務大臣は4月15日の閣議後会見で「携帯電話サービスの混信事案が発生していることは把握している」と述べ、「関係機関と連携して対応に当たっている」と言及しました。
2025年4月に確認された事例の詳細
今回の問題は、4月12日、13日の週末にSNS上で「偽基地局による違法な電波が確認された」という投稿が相次いだことから注目を集めました。
Xでは、通信機器とみられる機械を積載した不審な車両の画像や、中国語でクレジットカード会社を装ったフィッシングメールが送られたという報告が広がりました。
特に東京都心や大阪市などの都市部で、携帯電話の基地局を装って発出された違法な電波が確認されています。
この偽の基地局は、国内で商用利用されなくなった周波数の電波を発信し、正規の通信を妨害しているとのことです。
日本人への影響は限定的?専門家の見解
立命館大学教授でデジタル・フォレンジック研究会会長の上原哲太郎氏によると、今回の違法電波の影響は日本人のほとんどには「関係ない」とのことです。
その理由として、違法電波に使用されている周波数が重要なポイントとなっています。
現在の違法電波は主に2G(GSM)の規格を使用していますが、日本では現在4Gや5Gが主流であり、「(2Gが)オンになったスマホを持っている人はほとんどいない」ため、多くの日本人ユーザーにとって直接的な影響は限定的であるとしています。
上原氏は「今回は古い規格の携帯電話の脆弱性が突かれているが、あまり気にすることはない」と説明しています。
誰が標的?インバウンドを狙った攻撃の可能性
専門家の分析によると、今回のニセ基地局による攻撃は主に外国人、特に中国系の人々を標的にしている可能性が高いとされています。
上原哲太郎氏は「たぶん中国系の人を狙ったフィッシングで、偽SMSの送り込みが目的」と指摘しています。
これは、日本国内ではサービスを終了している2Gの帯域でも、海外では使用している国があるためです。
かつてNTTドコモで「iモード」を立ち上げた近畿大学情報学研究所所長の夏野剛氏は「GSMは世界中で使われている。
ランダムにSMSを打つよりも、外国人がいっぱい集まっているところで、基地局でハックした方が、たくさんの人にメッセージを送れる」と説明しています。
また、こうした攻撃が近年増加している背景には「インバウンドの数が増え始めたのは2009年以降。
(iモードの頃は)インバウンドがなかった」と、国内に外国人が増えたことが要因として挙げられています。
SNSでの報告と拡散状況
今回のニセ基地局問題は、SNS上での投稿から広く注目を集めるようになりました。
Xで1万いいねを超える拡散があった投稿では、通信機器とみられる機械を積載した不審な車両が確認でき、中国語によるフィッシングメールを送信するなどの行為が行われたと報告されています。
こうした投稿の拡散により、メディアの報道も増え、問題の認知度が高まりました。
政府および携帯電話会社の対応
総務省や携帯大手各社は、この問題について調査を開始し、対策に乗り出しています。
村上総務大臣は「事柄の性質上、個々の事例にコメントは差し控える」としながらも、「関係機関と連携して対応に当たっている」と述べています。
また、「総務省では、引き続き、誰もが安心して電波を利用できる環境の確保にしっかりと取り組んでまいりたい」と述べ、省として引き続き通信の安全性確保に努める姿勢を示しています。
携帯電話会社の対応としては、ソフトバンクが「疑わしい事象は把握している。
対策に向けた取り組みを進めている」とコメントし、他の携帯大手各社も「影響を調査中」などとしています。
ニセ基地局の取り締まりの難しさ
ニセ基地局の取り締まりには技術的な困難が伴います。
上原哲太郎氏は「現場を押さえなくてはいけない。
やる側もたぶん車で(移動しながら)やっている。
電波を調べて(違法なものを)送っている事実がわかって初めて(検挙)だ」と語っています。
つまり、ニセ基地局を運用する犯罪者が場所を移動しながら行っているため、当局が検挙するのは容易ではないのです。
この点が、問題解決を難しくしている要因の一つといえるでしょう。
4G/5Gへの攻撃の可能性は?
現時点では、ニセ基地局による攻撃は主に2G(GSM)を利用したものが確認されていますが、将来的に4Gや5Gを利用した攻撃が行われる可能性も懸念されています。
2ちゃんねる創設者のひろゆき氏からは「偽装する人が4Gや5Gを使う可能性はないのか」という質問が出ていますが、上原氏は「今のところ4G、5Gを使ったこの手の手法が簡単にはできない」と説明しています。
ただし、技術の進歩とともに、この状況も変わる可能性は否定できません。
今後の技術動向を注視することが重要です。
個人でできる対策
では、私たち個人はどのようにしてニセ基地局の被害から身を守ればよいのでしょうか?
専門家は以下のような対策を推奨しています:
- 最新機種の使用
対策が施された最新のスマートフォンを使用することで、リスクを低減できます。 - 不審なメールのURLにアクセスしない
フィッシングメールに添付されたURLには絶対にアクセスしないようにしましょう。 - セキュリティアプリの導入
信頼できるセキュリティアプリを導入し、不審な通信を検知できるようにしておくことも効果的です。 - 公衆Wi-Fiの利用に注意
特に海外からの訪日者は、信頼できる公衆Wi-Fiを利用するか、自国のキャリアのローミングサービスを利用することが望ましいでしょう。
スマートフォンは通信できる電波を自動で検知し、接続するため、一般消費者にとって、偽の基地局による通信を未然に防ぐことは難しい面があります。
そのため、上記のような自衛策が特に重要となります。
訪日外国人への注意喚起が必要
今回のニセ基地局問題は主に訪日外国人を標的としていると見られています。
特に2G(GSM)が比較的最近まで使われていた国からの訪問者や、GSMが使えるスマホを持っている人、あるいはその機能をわざとオンにしている人が被害に遭いやすいとされています。
日本に住む私たちも、外国人の友人や知人、あるいは観光客に対して、この問題について注意喚起をすることが有効かもしれません。
特に以下の点を伝えるとよいでしょう:
- 日本滞在中は可能な限り2G接続をオフにする
- 不審なSMSに記載されたリンクには絶対にアクセスしない
- クレジットカード情報などの個人情報を要求するメッセージには注意する
インバウンド増加と今後の展望
今回のニセ基地局問題は、訪日外国人の増加と共に今後も続く可能性があります。
特に2025年は大阪・関西万博が開催される年であり、さらに多くの外国人観光客が日本を訪れることが予想されます。
近畿大学情報学研究所所長の夏野剛氏は、こうした問題が発生する背景として「インバウンドの数が増え始めたのは2009年以降。
(iモードの頃は)インバウンドがなかった」と指摘しています。
今後、外国人観光客の増加に伴い、こうした犯罪も巧妙化する可能性があります。
政府や通信事業者による対策の強化はもちろん、私たち一人ひとりがセキュリティ意識を高め、適切な対策を講じることが重要です。
ファクトチェックの重要性
偽基地局の問題に限らず、情報の真偽を見極めることは現代社会において非常に重要です。
SNSなどで拡散される情報の中には、誤情報や偽情報も含まれている可能性があります。
ニセ基地局の問題に関しても、SNSでの投稿をきっかけに注目が集まりましたが、常に公式情報や専門家の見解を確認することが大切です。
村上総務大臣も「事柄の性質上、個々のSNSの投稿の内容の真偽も含め、個別具体的な内容については、回答を差し控えさせていただきたい」と述べており、慎重な情報の取り扱いを求めています。
まとめ – 正しい知識で身を守ろう
2025年4月に東京や大阪で確認されたニセ基地局による違法電波の問題は、主に訪日外国人を標的としたものと見られていますが、セキュリティ対策の不十分な古い機種を使用している日本人ユーザーにも影響する可能性があります。
現時点では、2G(GSM)の規格を使用した攻撃が確認されており、4Gや5Gを主に使用する多くの日本人ユーザーへの直接的な影響は限定的とされています。
しかし、技術の進歩とともに攻撃手法も進化する可能性があるため、引き続き注意が必要です。
私たち一人ひとりが、最新のスマートフォンを使用し、不審なメッセージには注意を払い、セキュリティ対策を万全にすることで、ニセ基地局の脅威から身を守りましょう。
また、周囲の外国人観光客などに対しても、必要に応じて注意を促すことも、善意ある行動と言えるでしょう。
総務省や携帯電話会社による対策の進展にも注目しながら、安全なデジタルライフを心がけていきましょう。
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